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目が覚めるとそこには
死んで目が覚めるとそこには、異世界が広がっていた……というのがラノベのよくあるパターンではあるが、現実はそうはいかないものだ。
いつもと同じ天井、変わらぬ部屋。今日もスーツを着て、ネクタイをしめて会社へ行く。
「行ってきます」
答えてくれる相手も、誰もいない。
仕事とも言えない雑務をこなし、誰と会話をすることなく家に帰る。
ああ。今日も空気扱いで、一日が終わる。本当にかわりばえしない毎日だ。
真っ暗な部屋の中、身体を横たえる。
もう疲れてしまった。どれくらい、こんな生活を続けてきたんだろう。
天井に向かって手を伸ばす。空虚な黒い空間は、そのまま空まで届きそうな気がした。
「おれはいつになったら、成仏できるんだろう」
幽霊歴五十年。お迎えはまだこない。
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