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一瞬思考が停止した。
長年幼馴染の冬羽は、何を言い出したのか。
これは夢?
図書室で目が覚めたと思っていたけど、実はまだ眠りの中だったとか?
試しに頬をつねってみるが、普通に痛い。
これは現実だ。
「姫月」
「!」
いつも“お前”で、名前でなんて呼ばないくせに。
不意打ちなんて卑怯だ。
「俺、姫月のこと……」
「待って!」
私は咄嗟に冬羽の口を手で覆った。
頭が付いていかない。
けど、その後の言葉は聞きたくない、って本能的に思った。
そして、私の考えを伝える。
「私、冬羽のことそういう風に考えたことないから、その……」
しどろもどろになりながらも、私は懸命に言葉を探す。
冬羽は、今日告白してきたような、知らない人じゃない。
誰よりも知ってて、誰よりも親しい人。
でも、恋愛対象ではなかった。
私はそれを、正直に伝えた。
いつも私のことを理解してくれる冬羽。
少ない言葉でも、冬羽なら理解してくれる。
私はそう思ったのだが、返答は予想外のものだった。
「じゃあ考えて」
「ん?」
「俺は本気だから」
「ん?」
「考えたことないんだろ? じゃあとりあえず考えて。それでダメなら諦めるし」
「んん??」
「明日からガンガン行くから。覚悟しとけよ」
私の思考は置いてけぼりにされ、冬羽はどんどん話を進めていった。
最後の決め台詞は、ニッと不敵な笑みも覗かせて。
彼の背後から差し込む夕陽と、彼の笑顔が眩しくて、私は目を細める。
……こんな冬羽、知らない。
その後は、なんとなくぎこちない雰囲気で、冬羽は何か話していた気がするけれど、何を話したかは覚えていない。
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