第1試合 春

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この学校は、グラウンドが狭い。 この学校の仕組みは、ちょっとだけ特殊だ。 まず、校門まで、ゆったりとした長さ50mほどの坂道が続いていて、その坂道沿いに桜が何本も植えてある。 小学校がこの近辺じゃなかった俺は見たことないけど、どうでもいい。 その坂道の途中のから見て右手にグラウンドがある。『クラブハウス』と呼ばれる言わば部室棟が手前の方にある。 グラウンドへはフェンスで仕切ってあり、そのフェンスの部室棟と反対側に、グラウンドに隣接する手すりのある上に登る小さな坂道がある。そこを登ると、校舎の裏側あたりに出る。 と、まあ複雑な訳。 グラウンドから校舎側への階段は急で、小さな坂道の先と同じ場所に出る。 そこから緑色のネットと緑色の木々に囲まれたグラウンドを一望できるから、よく部活が終わると俺はそこに行って伸びをする。 運が良ければこの市の市歌にもなっている環礁岳に沈む夕日を見られる俺の好きな場所。 まあ、そんな早く終われる時なんてほぼないけど。 さっきも言ったように、隣では目立つ赤や緑の練習着を着たサッカー部がいて、シュート、パス練習をしている。 奥の緑のコートでは小麦色に焼けた女の子たちがテニスをしている。コートが、ボールを弾く音が小気味いい。 ……みんな楽しそうだ。 ………何故だろう…。何故。ワクワクしない。 最近野球が楽しくない。だからだろうか、バットを振りきれないんだ。 「集合ーーーーっっっ!!」 3年のキャプテンの坂部大貴さんが叫んでいる。行かないと…。 でも… 「おい!なにしてんだ前野!!集合集合!!」 さっき監督に怒られてたクラスメイトの山之内隼人が笑いながら全速力で走っていく。 「………うん…。」 俺は、バットを振りきれなくなった。
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