CELEBRATE

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 例えば、 「国際金融の会議で、出席者が母国の国益を背負って議論する――これは○か×か?」  国際雇用研修事業で使用された問題である。 「答えは○」 「当然だろうな」と理事長はうなずいた。  次は、 「わが国の社会貢献のあり方に共感できるからこの国にいる――答えは○」  そして最後に日本の参加者の成績を見ると、最下位だった。  理事長の嘆き節が続いた。 「いつからこの国はダメになったんだ」  資料を見て理事長補佐も言った。 「まことにおっしゃる通りです」 「日本人といえば勤勉実直、かつてのジャパン・アズ・ナンバーワンと世界中から賞賛嫉妬もされた極東の日昇る国が、――見る影もない世界のお荷物じゃないか」 「はい。まことにおっしゃる通りです」  地下鉄の運行ダイヤはないのも同じ(昔のインド)。給料は給料日に振り込まれない(昔のインドネシア)。官僚は政治家同様にウソをつき(昔の北朝鮮)、警察は証拠資料をねつ造し、交通事故は増えているのに発表は姑息な情報操作で「減っている」とみせかける(昔の中国)。悪も不正もやったもん勝ち。正直は美徳という言葉は日本国では死語になった。 「これほどひどいんだぞ」と理事長は言った。     
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