815人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
リシルはハイエルフのハーフのくせに肉料理が大好物らしいので、今度この街一番の炙り肉の店にでも連れて行ってやろう。
そうしてやってきたのは一軒の少し古びた宿。
最初この宿を目にしたリシルの視線が「え? ここなの?」と語っていたが、扉を開けて中に入ると意外と小奇麗にされているのに気付いて今は隣でホッとしている。
何気にリシルは英雄を両親に持つ、名誉貴族の家のお嬢様だ。
そのため、冒険者にしては宿や食事にかなりのこだわりがある。
たぶんD級冒険者なら絶対にやっていけない程度には生活水準も高いので、下手な所に連れて行くと不機嫌になるので要注意だ。
「すみません。宿に泊まりたいのですが部屋あいてますか?」
宿に入ったオレは、見知らぬ若い女性が慌ただしく椅子を並べているのを見つけて話しかける。
「あ!? 気付かなくてすみません! えっと、宿泊ですよね!?」
そう尋ねながらも、こちらの返事も待たずに女性はあっという間に食堂の奥に消えていく。
中々せっかちな性格のようだ……。
この宿屋の名は『夢見る砂の宿』と言い、1階が食事処も兼ねた食堂で、2階が宿泊用の部屋というこの世界では一般的な作りになっている。
暫く待っていると、その食堂の奥の調理場から今度は見知った顔の若い男が出てきて話しかけてきた。
最初のコメントを投稿しよう!