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再度放たれた漆黒の荊棘は、先ほどの光景の焼き直しのように寸分違わず戦士蟻の頭を穿ち、その活動を止める。
しかし、その仲間の最期は残った一匹に見られていた。
「しくじったな。勘付かれたようだ」
今度はそう呟くと、オレは立ち上がって向かい来る戦士蟻を迎え撃つ。
ギシギシと堅牢な顎を強調しながら迫りくるその迫力は中々のものだ。
セナなどびびって腰を抜かすんじゃないだろうか? などとどうでも良い事を考えながら、今度は剣本来の持ち方で柄を握って一閃する。
「ギシャァ!?」
オレに噛みつこうとした戦士蟻のその一撃は空を切り、掻い潜ったオレの愛剣の横薙ぎの一閃を喰らって呆気なく吹っ飛んだ。
虫系の魔物はしぶといので油断は出来ないが、鞘ごと振りぬいた今の一撃で胸のあたりが完全にひしゃげている。さすがにここまで破壊すれば、もう大丈夫だろう。
「はい、おしまい。魔力結晶取ったら一旦戻るか」
純粋な魔力の乱れから生まれた魔物は、倒して暫くすれば元の魔力となって霧散する。
その魔力で形成されていた魔物が霧散する際に残していくのが魔力結晶だ。
この魔力結晶は冒険者ギルドが討伐証明として買い取ってくれる。
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