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梯子を登ると強い風が体に当たってやはりちょっと怖かった。
でも、その後に見えた景色に思わず目を奪われる。
視界はより開けて満点の景色。
今度は青空だけでなく、足元の校庭やその先の町の様子まで見渡すことができた。
「どう? 綺麗でしょ」
そう胸を張るマホちゃんに思わずうなずいてしまう。
「うん、綺麗だ」
「こんなに眺めが良いならアクマもすぐ見つかるわ」
と、いうマホちゃんの言葉でようやくアキくんは当初の目的を思い出す。
さっきまであんなに怖がっていたのに、すっかりアクマのことを忘れていた。
そして、今もあまり気にならない。
それだけこの景色は本当に綺麗だった。
その後もアクマを必死に探すマホちゃんの横で、アキくんはいつまでもその景色を眺めていた。
いつまでもいつまでも眺めていた。
しばらくして、マホちゃんは飽きたのか「えいっ」と、飛び降りて屋上へ出たときの窓の前に着地する。
「帰りましょう」
「うん」
と、頷いてアキくんも梯子を使って下に降りた。
降りた後、帰りながらアキくんはマホちゃんへつぶやく。
「アクマ見つからなかったね」
「そうね。でも……」
アキちゃんは笑いながら言った。
「楽しかったでしょ?」
その言葉に、アキくんはやっぱり頷いた。
時々、マホちゃんが授業中に教室を抜け出す気持ちが少しわかったような気がしたから。
そして、何食わぬ顔で教室に戻った2人は、当然先生にみっちり叱られた。
怒る先生はまるでアクマのようだった。
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