理由はいらない

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「へぇ…お前もこの部活に入るんだ」 俺より先に部室にいたそいつは、不敵に笑いながら振り向いた。 部員不足で潰れかけの地球天文部。 潰れかけどころじゃない。俺より上の先輩はおらず、現在部員ゼロ。 俺とコイツが入れば二人だけの部活となる。 コイツが地球天文部に入るのはなんとなく分かっていた。 他の授業は全部寝てても、地学の宇宙分野だけは必ず起きていること。 中学の林間学校でこっそり一人で抜け出して高原の星を眺めていたこと。 小さい頃、親戚に買ってもらった星座の本を自慢げに読んでいたこと。 ぜんぶ、 覚えてる。 「実は俺も前からこういうのに興味あったんだ」 なんでこんな嘘言わなきゃならねぇの。 誰のためなんだよ。 「そうか。しかし部員二人って寂しいな」 「そうだな」 二人きりで嬉しいだなんて、死んでも言えなかった。
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