理由はいらない

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「まだこれ俺は使ったことがないんだ」 「どうして」 俺は訊いた。 すると奴は、 「どうせならお前と一緒に見たかったから」 なんて言いやがった。 馬鹿野郎。なんでそんなこと言うんだよ。 お前と俺では気持ちの意味が全く違うのに。 期待させるようなこと言うなんて、本当に残酷なんじゃないの。 溢れる気持ちとつぐんだ唇。 結局何も言えなくて黙って部室の暗幕を引いた。 「つけてみろよ」 「うん」 カチッ… 途端にそこは宇宙になった。 数多の星が輝いていた。 懐かしい光景に胸がいっぱいになって、口は開きっぱなし。 すると口元に温かい感触が広がった。
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