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「……わかった、気は乗らないけど。本当にいいのね?」
わたしの催促に折れたらしく、みーちゃんはカメラを操作しながらわたしに確認する。
「いいよ。早く」
本当は、覚悟を決めるためにも少し時間が欲しかったところだけど、心の根っこでは違ったらしく、私は催促する。
早く、知ってほしい。
「はい、ちーず」
にい、とわたしは自分ができる限りの笑顔を浮かべ、ピースサインを前にかざしながら、一心に念じた。
なるべく強く、できるだけ濃く残るように。
みーちゃんがシャッターを切る。
「どう? かわいく撮れた?」
「ちょっと待って。えーと……」
みーちゃんが手にした魔法の道具をいじる。
わたしは危惧した。わたしのおもいが、熱量が、果たしてこの小さな機械に収まるのかと。
頬に当たる雪が、触れる途端に解ける感触がある。顔が熱い。体が熱い。
そして頭は火照っている。
「あ……」
みーちゃんが写真の中のわたしを見たようだ。何かに気づき、か細く声をあげた。
「みーちゃん、わたしが何を考えてるか、わかってくれた?」
河川敷には季節外れの桜がポツポツと咲いている。
わたしが凍えて死にそうなときに現れたみーちゃんは桜のようだった。
咲ってわたしに語りかけ、春をくれた。
それがわたしの友達。わたしの自慢のみーちゃんだ。
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