彼女を襲った悲劇

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「どげんしてって………決まっとうやないね。幸せになってほしいったい」 母の声には心からそう思って言っていると信じられるだけの熱がこもっていた。 だが義文にはそんな思いが伝わらなかったらしく、母に向けるその目はどこか冷ややかだった。 「幸せねぇ………」 その目と同じだけの冷ややかな声で呟くと、義文は大きくため息をついてみせた。そのわざとらしいため息のつき方に僕は思った。義文は母の思いに気づいていながら、敢えて気づいていないふりをしているのではないか。 「やったら何で母さんは梢に嫌な思いばさせてきたと?」 「え………」 母の顔に困惑が一気に広がっていく。 「梢に嫌な思いばさせたってことは、俺にも嫌な思いばさせたってことやけんね。そげなこともわからん人に幸せになってほしいやら言われたところで信じられるわけなかろうもん」
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