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柳瀬はこの話を二十六年の人生の中で唯一伊与田のみに打ち明け、伊与田から対物性愛という性的指向ではないかと教えられた。
柳瀬は人知れずショックを受けたが――他の人間の言う好きという感情に齟齬があったという事実に――やはり伊与田の存在は柳瀬にとっての救いだった。
だが、そんな伊与田であっても柳瀬の性的指向を直に感じたことはない。
柳瀬が隠しているからだ。
ゲイである伊与田の大人のアプローチは柳瀬をクスリと笑わせるものの、むろんその気になったことは一度もない。
柳瀬は伊与田に隠れて、彼と共に暮らす住居兼職場で、伊与田の持ち物であるトルソーを愛することで、ほのかな悦びを日々感じていた。
伊与田のもとで働き始めてから数年が経ち、柳瀬とトルソーとの遊戯は年々妖しく、背徳的なものになっていた。
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