ダブルムーン

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ダブルムーン

 頭がいたいよーぉ。  身体もダルい。  目もぼやけている。  ――そっか、メガネかけてなかったんだぁ……。 「痛っ!」  ベットの横のテーブルに置いてあるメガネを取ろうとして、左腕に痛みを感じた。  どこかでぶつけたらしい……わからない、どこだったっけ……? まあ、いいや。  メガネをかけた。視界はハキリしたが、脳みそはボヤけたままだった。    昨日は居酒屋で女子会があり、かなり盛り上がってしまった。  帰宅したのも深夜近くだったみたいで、外出着のまま爆睡していた。足元には、ヒールも履いたままだ。  ホント、情けない……。  ストレスは晴れたみたいだけど、二日酔いは醒めない……。  ベットから起き上がり、開け放たれたサッシに近寄った。  カーテンも開けっぱなし状態だったから、直射日光が眩しい。  でも、とにかく朝だ。今日は休日。  あたしは両手を挙げて力いっぱい伸びをした。 「痛っ!」  左腕を痛めているのを忘れていた。  でも、気分は上々。    清々しい気温だ。  何処からか雀の歌声が聞こえる。 「すっごい綺麗な青空」  思わず声が出た。 「ふわふわの白い雲も美味しそう」  綿菓子を連想したらお腹が減ってきた。 「何か食べよっと」  そう口に出たが、胃の調子が悪い。当たり前だ。  昨夜は、一人でビールをジョッキで二杯、チュウハイ一杯に、図に乗って赤ワインまで一本空けた。  それに、何やからのお摘まみをたらふく食べ、十キロも太ったんじゃないかと思うくらい。  あーあっ、さすがによく食べたわ――。  女子会じゃなかったら、ここまでは飲まないし食べない。  あっ、彼からのメール。  どうせ、また、『ディナー、いこっ』でしょ。  無理ね。絶対、無理っ。行けるわけないじゃない。  あたしを殺す気っ?       突然、翳った――。 「またーっ、ダブルムーン」  あたしは空を見上げた。  二つの小さなつぶらな瞳が、自分たちを見下ろしていた。  何なのいったい……これは?
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