望遠撮影

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「2」 ぎゅっと目を閉じてしまう。 「1、Fire」 レリーズを思い切り押し込む。 シャッターを切る音と、何とも言えないうめき声じみたものが響く。 「OK。撤収」 雪を踏み込む音。 被っていた雪原迷彩の断熱布でカメラを包み、雪の中を走る。 「……『遮神機』。ネーミングは馬鹿みたいだけど、技術局の腕は確かね」 疾走するオフロード車の中で、教官が少しだけ満足そうに言う。 確認している画面には、いくつもの断末魔が写っているはずだ。 自分はまだ、それを直視できない。ホラーは苦手なのだ。 雪に隠れたガレキを避ける。 雪の重みに負け、傷んだ建物がまた崩れる。 1年あまり破壊を繰り返した宇宙人が、カメラで消えると分かったのはつい先月。 何故か、カメラは一眼、撮るのは女性でないといけない。 記録を兼ねて開発されたのが、消える瞬間を撮影できるこの機体だ。 普通のカメラでは、風景しか残らないらしい。 「大規模キャンプが消せたわ。人類生存にまた一歩近付いたわね」 目の前に、何かが飛び掛かって来た。 教官がすっと愛機を構え、フロントガラスに取り付いた宇宙人を撮る。 悲鳴だけを残し、宇宙人がまた一匹消えた。 「急いで。まだ次がある」 「……はい」 アクセルを踏み込む。 次は前線に近い。 専用銃弾でボロボロになった宇宙人を撮り続ける、気乗りのしない任務だ。 人型宇宙人を消すのは、まだ慣れられない。  
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加