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「2」
ぎゅっと目を閉じてしまう。
「1、Fire」
レリーズを思い切り押し込む。
シャッターを切る音と、何とも言えないうめき声じみたものが響く。
「OK。撤収」
雪を踏み込む音。
被っていた雪原迷彩の断熱布でカメラを包み、雪の中を走る。
「……『遮神機』。ネーミングは馬鹿みたいだけど、技術局の腕は確かね」
疾走するオフロード車の中で、教官が少しだけ満足そうに言う。
確認している画面には、いくつもの断末魔が写っているはずだ。
自分はまだ、それを直視できない。ホラーは苦手なのだ。
雪に隠れたガレキを避ける。
雪の重みに負け、傷んだ建物がまた崩れる。
1年あまり破壊を繰り返した宇宙人が、カメラで消えると分かったのはつい先月。
何故か、カメラは一眼、撮るのは女性でないといけない。
記録を兼ねて開発されたのが、消える瞬間を撮影できるこの機体だ。
普通のカメラでは、風景しか残らないらしい。
「大規模キャンプが消せたわ。人類生存にまた一歩近付いたわね」
目の前に、何かが飛び掛かって来た。
教官がすっと愛機を構え、フロントガラスに取り付いた宇宙人を撮る。
悲鳴だけを残し、宇宙人がまた一匹消えた。
「急いで。まだ次がある」
「……はい」
アクセルを踏み込む。
次は前線に近い。
専用銃弾でボロボロになった宇宙人を撮り続ける、気乗りのしない任務だ。
人型宇宙人を消すのは、まだ慣れられない。
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