太古よりようこそ

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 数千年前、この世界には今とは別の文明が存在していた。それは宇宙空間に進出するほどに高度なものであったが、海水面の上昇を始めとした度重なる超自然災害には流石に耐えることが出来ずに終わりを告げた。それが今現在の定説である。  滅んでしまった『一次文明』の痕跡が世界各地で観測されている。書物、遺跡、化石、創作物。新たに生まれた『二次文明』はそれらの残滓を利用して急速に発展していった。特にタイムカプセルに入れられた中身は災害の影響を受けずに残っているため、大きな恩恵をもたらした。パソコンもその内の一つである。  そのパソコンの前で十悟は頭を抱えていた。タイムカプセルは年間百個近く発掘されている。中身は多種多様なモノが入っているが、ごく稀に一次文明の人間そのものがコールドスリープで眠っている例も確認されている。十悟のタイムカプセルがそれだ。上手くいけばあらゆる分野に大きな進歩を与え得るが、問題が一つ。今まで一例として人間が無事に目覚めたことが無かった。『目を覚ました人間は我々の顔を見るなり取り乱し、発狂した。彼らの言葉で落ち着くようにと声をかけたが効果はなく、次第に弱り死に至った。』どの資料に目を通しても同じような結果ばかり。開け方次第で中身が水泡に帰す宝箱に、十悟は二の足を踏まざるをえなかった。
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