封筒

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 真っ直ぐ家に帰るとすぐさまギターを取り出した。テレビなどで見た感じに構えて弦を弾いてみた。ギャーンと鳴りはしたのだが、どこかハリがなく納得がいかない。ペグを回して音を合わせてから、もう一度弾いた。次はギャォーーンと勢いのある気持ちの良い音がでた。俺はその音に満足し、適当に弾き鳴らす。しばらくすると部屋の扉が開き母が入ってきた。  「音がうるさいんだよ。あら、ギターじゃない。それ、どうしたの?」  母は俺が手にしているギターに気がつくと俺を不審げに見つめてきた。  「先輩から譲ってもらったんだよ」  「そうなの。でも、うるさいから家でやるのは控えてね」  一言忠告すると母は部屋から出ていった。  「うっさいな。何しようと俺の勝手だろ」  俺は舌打ちをしつつ、ギターをケースに戻すと近所の公園へと向かった。
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