2年目の冬

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カシャ 「すいません。」 ジッジッジッ・・ 「ホント、面倒。巻取りも手動なんて信じられない。」 カチャ 「このフィルムをお渡しするために、あなたを探していました。2年かかりました。高校生ですから私。探偵なんて雇えないし、大人たちに相談するつもりもありませんでしたから。」 「赤いカメラ、可愛いです。ママ仕様ですね。 こちら見てらっしゃいますね。すいません、長々と。雪、降ってきちゃいましたね。 ご主人様ですね、あのベビーカーの中にいるのは女の子かな?男の子かな?風邪ひいちゃいますね。」 「あなたがもし、暗い顔をされていたらこのまま帰るつもりでした、このフィルムは渡さずに。 でも本当に幸せそうな優しい笑顔だったから。」 「もちろん、責めてなんかいません。終わってたんですよね、叔父が海外に行く前に。 だから彼はこのカメラを置いて行ったような気がしています。あなたに惨状を見せたくなかったのかもしれません。だからこのフィルムには、あなたが写っている気がしたんです。 帰ってきた叔父のベストのポケットには、あの部屋のものと同じ写真がありました、ポケットの大きさに焼かれて、パウチされてました。」 「そのフィルムは現像してもらっても、しなくても、捨てても、持っていてもらっても、すべてあなたにお任せします。というかもう差し上げたのですから、どうぞお好きに。 ただ最後の一枚は叔父のことを思ってくださったあなたです。 もっとも、3年以上前のフィルムが生きてるかどうかわからないですけどね。でも、このカメラはライカですから。」 「ありがとうございました。今、叔父を一瞬でも思ってくださって。天国で怒ってるか、笑ってるかわかりませんが。ただ彼の気持ちは私と同じだと思います。」 「どうぞ、幸せでいてください。これからもあの方と、お子様と。その赤いカメラでたくさんの幸せを写してくださいね。」 「はい。私もいつか幸せになります。 ではさようなら、どうぞお元気で。」 〈 fin 〉
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