第二夜

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急に場面が変わった。 安治は室内にいた。知らない部屋だ。 相変わらず頭から垂れている長い白髪を指で摘まむ。自分――安治の体――は見当たらない。 きちんと片付いた、ホテルの一室のような部屋だ。 隣の部屋で物音がしたのと同時に、聞き覚えのある声で、 「目が覚めたか」 と聞こえた。 「うん」 と安治は自分が答えるのを聞いた。 エロスが入ってきた。 安治が知っているエロスは、いつもポニーテールとミニスカートがお決まりだった。今は髪を下ろしてショートパンツを穿いている。雰囲気が違うせいか、なんとなくかわいい。 珍しいね、エロスちゃん――と言おうとした。 実際に出た言葉は、 「おねえさん」 だった。 ――え。 エロスがタナトスの姉だということは知っている。しかしタナトスがそう呼ぶのは聞いたことがない。 エロスは首を横に振った。 「私はおまえの姉だが、恋人でもある。――恋人として認識してもらいたい」 エロスは嬉しくもなさそうに――むしろ、どこか痛いのを我慢する表情で、事務的に伝えた。
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