第二夜

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何かを隠しているのだろうか、と安治が思うのと同時に、腹立たしさや悲しさみたいなものが腹に湧いた。 自分の感情ではない、と安治は思った。きっとタナトスの感情だ。タナトスは怒っている。 だからタナトスの声が、 「わかりました」 と無機質に答えたときには、ずいぶんと違和感があった。 「私はあなたを恋人として認識します」 ――え。 タナトスが自分を『私』と呼んだ? エロスは「それでいい」とでも言うように曖昧に微笑んだ。語るべきことを語らずに、ごまかそうとしているような。 タナトスの感情に憎々しさが加わった。恋人と思えと言いながら、少しもこちらを信用する様子のない相手に憤っている。 あまり関わりたくないのか、言うだけ言うと、エロスはさっさと部屋を出て行ってしまった。 「恋人って何――」 内面の混沌と裏腹に、呟かれた問いはやはり無機質に響いた。
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