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「起きてください」と体を揺すられて目が覚めたとき、安治の全身は汗びっしょりだった。
「うわぁ、うわ」と弱い悲鳴を上げながら部屋を見回す。ベッド、ベッドに迫った壁、天井、天井の照明、サイドテーブル――おりょう。
「大丈夫ですか?」
同居人であるスレンダーな美女は、いくらか心配そうに身を屈めて覗き込んでいた。
「おりょうちゃん」
呼んで細い腕をつかむ。
「これって現実?」
不安そうに聞く安治をおりょうは抱きしめた。
「怖い夢を見られたんですね」
「夢? ――夢……」
骨っぽくひんやりした手が背中や頭を撫でる。その感触に急激な現実味と安心感を覚える。
――戻った。
少しして落ち着いた安治に、おりょうは水のグラスを差し出した。礼を言って受け取りながら、今見た夢について話し始める。
「――夢だってわかってたんだよ。始まったときから、ああこれは夢なんだってわかった。どうしてかわからないけど、とにかくそう感じた」
思い出しながら水を一口含む。
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