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「見覚えのある場所で――たぶん、地下の図書室かどっかで、パソコンが机に置かれてた。
俺は、これから何が起こるんだろうって思った。だって夢なんだから。
――でも特には何も起きなくて、俺はパソコンでビデオを観始めた。最近観てるドラマの続きの。
――そのうちに、みち子さんともう一人、男の人が入ってきて、しゃべりながら何か探し物をしてた。俺は何か起きるだろうと思って、そっちを気にしてた。でも何も起きなかった。
二人はばらばらに棚の間に隠れちゃって、たまに声だけ聞こえた。
俺は何か起きるのを待ってた。急に場面が変わったりするだろうって。でも、何もなかったんだよ。そのうちビデオが終わって、俺は移動しようと思った。
パソコンを消して、立ち上がって――歩いてふつうに部屋を出た。
すごく変だと思った。夢なのに、なんでこんなにふつうなんだろうって。
――そっから歩いて、ふつうに食堂に行って、窓際の席に座った。あんまり人の出入りがなくて、知ってる人には会わなかった。
しばらくして退屈だから、厨房のおばさんとこ言って声かけたんだ。『これ、夢ですよね』って。そしたらおばさん、『そうだよ』って答えた。ふつうに片づけしながら。
それから、ほしこさんとこ行こうと思って、通路を歩いてふつうに――
ああ、そうだ、途中でヤギに会ったんだよ。どのヤギか知らないけど、俺、前に噛まれてるから怖くて、夢のなかならきっと噛まれるか蹴られるかするだろうと思って、道の端に寄って通り過ぎるのを待ってた。
そしたらそのヤギ、ふつうに会釈して俺の前を通って行って(「でしたら八木さんですね」とおりょうが言った)――
――何も起きなかった。その辺で俺、すごく焦ってた。夢なのにおかしいって。
そのときはただ怖い感じがしただけだけど、今思えば、このままずっとこれが続いて起きられなかったらどうしよう、って焦りだったと思う。
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