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「――これって、夢じゃないよね?」
「はい」
「よかった。……でも、また見たらどうしよう」
「今夜寝たら、ですか?」
「うん」
おりょうは軽く首を傾げた。
「何が怖いんですか?」
「何がって」
理解されないことに驚きを覚えつつ、確かに、何が怖いんだろう……とも思った。
「特に何も起きていないんですよね?」
「うん」
「いつもと同じことが、同じ時間感覚で起きているだけ……」
「そうだよ。でもそれが気持ち悪いんじゃん。いつもと同じことが夢のなかで――」
なんで気持ち悪いんだ? 安治は自問した。
「――起きられなかったらどうしようって、不安になるじゃん」
「起きられなかったら――そこで生活するだけですよね」
「そりゃ、まあ」
「そこで起きるできごとは、現実のできごととそっくりなんでしょう?」
「でも夢なんだよ」
おりょうはまた首を傾げた。
「覚めなかったら、それは夢ではないのでは?」
「え?」
炊飯器が電子音を立てて炊き上がりを知らせた。おりょうはキッチンに行ってしまった。
安治は残りの水を飲みながら、最後の言葉について考えた。
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