第二夜

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思い返すと、確かにいろんな人からアプローチを受けていた。特に年配の人は、若いというだけでやたらかまいたがる。いきなり体を触ってきたり、卑猥な冗談を言ってきたり。 若くてきれいな人も寄ってくる。それは安治がおりょうの同居人だからだ。 以前、たま子に説教されたことがある。 「誰もおまえそのものに魅力を感じているのではないぞ。おりょうちゃんをあてがわれるくらいだから、よっぽど特殊な存在なのだろう……と皆、錯覚しているのだ。あるいはもっと直接的に、おまえを介しておりょうちゃんと親しくなりたいか――」 その言葉に納得してからは、誰がどう接触してこようと、自分が好かれているのだとは思わなくなった。 タナトスに寄ってくる人も多い。見た目がとにかく美しいからだろう。表面的な言動は優雅で、白々とした儚げな容姿には夢幻の王子様とでもいった趣がある。 でも中身は3歳児だ。なかなか言葉が通じない。それも、小難しい言葉と理屈を操れる厄介な3歳児なのだから、少しもかわいくなどない。 タナトスをもてはやす人は、目が節穴どころか、空っぽの頭にヘリウムガスでも詰まっているのだろう――と安治は決めつけていた。 「あのね、モテてるんじゃないからね、俺もおまえも。珍しがられてるだけだからね」 「では――モテるって何?」 新たに問われて溜息をつく。また余計な問いを立てさせてしまった。
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