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「わあ――」
彼は初めての景色に感激した。ぐるっと周りを見渡していた。
自分の家の庭なのにこんなに気持ちいいと思ったことはない。
自分の部屋の窓が眼下にあって、中がぼんやり見えている。
「――!」
――そっか。木の上ってこんなに高いんだ。
彼は細い足をぶらぶらさせた。
庭にある太い木の枝がごつごつとぎこちなく自分を抱いている。ちょっぴりお尻が痒い。
「――そんな高いところに行っちゃったの? 届かないの……!」
下から声がした。
髪の毛をお下げにして両耳の下から垂らした、緑の目の女の子。
自分の方にいっぱいに手を伸ばしている。
「ロン、いつもはロンの頭に手が届くのに、届かないの――」
そう言って何度もジャンプしている。
ワンピースの裾がジャンプする度に蝶のようにひらひら踊るのだった。
「届くよ。アンジーは天使なんだよ。――天使みたいにふわふわなんだよ」
そう返事をしていた。
「とどかないの! 行きたいの!」
まだ声を上げている。心なしか目を潤ませて。
「とどくよ!」
そう、大声で返事をした。――彼女に負けないくらい大きな声で。
「ロン、行くの、そこに行くの――!」
「いいよ、来なよ!」
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