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「そんな遠くにいるの、とおいの!」
「ううん! 声が聞こえるんだ!」
「どうしてここにいてくれないの!」
「――」
もしかして自分の声が聞こえていないのかと思った。
そう思ったら急に喉を何かに掴まれた気がした。
喉が詰まっている。それか、首をぎゅっと絞められているようだ。
――いや。待って。
彼は自分の顔の下に緑の物体を見た。
「――うっ!」
得体の知れない、緑色の太い腕のようなものだった。
――本当に首を絞められている。
「やめ――っ、やめろ――!」
そう言ったつもりが全く声が出ない。
首はさらに絞めつけられている。
つるだった。自分を絞めつけるのは深緑の、人の腕ほどもある太いつるだ。
――木だ。木に襲われてるんだ。
背中がぞっとして彼は震え上がりながらわああと声を上げた。
足をばたつかせていたら、地面に落ちた。
自分の家の庭だ。見慣れているはずなのにいつの間にか視界が緑の雑草だらけになっていた。
必死で起き上がって走る。
「あああ! 来ないで! 来ないでっ!」
遠くでそんな叫び声がする。
来ないで。自身もそう叫びながら走った。ふと横を見たら、あの緑のつるが自分を追いかけてきていた。
「うわあああ!」
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