夜明け前

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 男が一人、海岸沿いの路側帯に自動車を停めて僅かに仄白んだ水平線を双眼鏡で覗いている。  夜明け前の空を見るのが日課だった。代わり映えのしない、いつもの夜明け前だ。  幾何(いくばく)もしないうちに、辺りは日の光に包まれていった。そしてまた、今日も日が昇るのだ。  男は溜め息を漏らす。そして、自動車に乗り込むと、そのまま夜明けの海岸線を走り去って行った。
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