特別天然記念物「旧人類」

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 どのくらい眠っていたのだろう……それは一瞬のようでもあり、また永遠だったようにも思う。  その日、目が覚めると、あの凄惨を極めた戦争は影も形もなく終わっていた――。 「――ご気分はいかがですか?」  久方ぶりに眼を開けた僕が最初に目にしたものは、輝く銀髪のショートヘアに碧の眼をした女性だった。  歳は僕と同じ20前後だろうか? まさに思い描いていた〝近未来〟といった感じの、光の加減によって七色に輝く生地でできた、飾り気なく、スタイルの良い体にぴったりフィットする服を身に着けている。 「……ここは……僕はいったい……」  鈴を鳴らしたような声で尋ねる彼女に、僕はその整った顔をぼんやりと見つめながら尋ね返す。  上から僕を覗き込む彼女の頭越しに見えるのは、一点の汚れもない完璧なまでに真っ白な天井だけだ。 「ここは世界連邦・極東ブロックの首都〝中京(チュウキョウ)〟にあるセントラル病院です。あなたは海中に沈んでいた冷凍睡眠(コールドスリープ)ポッドの中で発見され、ここへ運ばれてきたのです」 「……中京? ……名古屋か…………」  穏やかな口調で説明する彼女の言葉に、僕はそんな風に地理的な理解を示した。  なぜ、そんな遠くまで運ばれたのだろう……? 最後に残っている記憶が正しければ、あの時、僕は東京のシェルターで眠りについたはずだ……なら、東京の病院に行くのが当然だと思うんだが……。  ……そういえば今、〝海の中〟とか言ったか……どうして海の中になんかいたんだろう? もしかして、あのシェルターまで破壊されてしまったのか? それじゃ、他の人達はどうなったんだ?  脳がはっきりと覚醒してくるにつれ、様々な疑問と戸惑いが頭の中に渦巻き始めたが、続く彼女の説明を聞いて、僕はいろいろと誤解していることを知り、また、さらに驚かされることとなる。
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