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「いいえ。ナゴヤではありません。かつてニッポンと呼ばれていた国の一部であることに間違いはないですが、ナゴヤではなくナガノと呼ばれていた行政区です。あなたを回収した旧トウキョウ地域やナゴヤを含め、この島の海岸部にあった主要都市は核攻撃により海中に没しましたが、標高が高く、2000m級の山脈に囲まれていたこの地は比較的良好な状況で残り、極東ブロックの首都を設置する場所に選定されたのです。」
「東京が水没? ……いや、日本は!? 日本はどうなったんだ? 戦争は? 戦争はどうなった!? どこが生き残った?」
僕はようやく大切なことをはっきりと思い出し、ガバっと棺桶のようなポッドの中で飛び起きる。
「うっ……」
と、急に目の前が暗くなって、再び意識が飛びそうになる。
「そんなに急に体を動かしてはいけませんよ。100年以上も冷凍睡眠状態だったんですから」
「100年!? ……そんなに長く眠っていたのか……」
クラクラする頭を押さえながら丸まる僕を見つめ、まるで看護婦さんのように注意をする彼女のその一言に、僕はまたも驚きを覚える反面、なんだか妙に納得するような気もした。
彼女の言うことが本当だとすれば、つまり今は22世紀の中頃になるということか? もっとも、まだそんな暦を使用していればの話であるが……。
それより遡ること100年前の2030年代初め……AI(人工知能)の急速な発展に伴い、多くのことをAIの能力に頼るようになった人類は、ついに政治・経済の舵取りも彼らに任せるまでに至った。
拝金主義により衆愚政治となり果て、行き詰まりを見せていた民主主義に代わる、AI管理社会の誕生である。
しかし、限られた資源と経済発展を巡り、デフォルトとして自国の利益を最優先するようプログラムされた各国のAIが、最終的に導き出した極めて論理的な答えは「武力による敵国の殲滅」だった。
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