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政治決定権を持つAI達は敵国に対しての武力制裁を可決。
その〝法〟に従う形で人類は従軍し、宗教や経済的格差、文化的価値観などによる同盟から大きく西欧・環太平洋、東ユーラシア、アフリカ・中東・南アメリカの三勢力に別れ、相手がこの地上から消滅するまで続く、終わりの見えない血みどろの大戦争――第三次世界大戦へと突入した。
しかも、人間と違い、ネットワークで繋がった情報体であるAIに〝個〟としての死生観はなく、けして死ぬことのない彼らは核兵器を使うことも厭わず、一週間と絶たずに人類の築いてきた文明は崩壊したのである。
そんな中、いまだ戦争を続ける軍人達を残し、僕ら民間人……特に僕のようにまだ学生だった者達は被害を避けるため、本当に終わりがあるのかもわからない戦争が集結するまでの間、まるでクマの冬眠の如く核シェルターの中で冷凍睡眠してその時を待つことになったのだった。
どうやら、僕以外の者にその時は来なかったみたいだけれども……。
「残念ながら、あなた以外のポッドは水没の折に破損し、中の人間はすでに死亡していました。さらに残念な報告をいたしますと、この地球上で現在生存の確認されている旧時代の人類はあなただけです」
見回せば、その白一色の無機質で清潔感のある部屋の中には彼女の他にもドクターやナースらしき白衣の人々がおり、歩み寄って来た彼らに再び寝かされながら、彼女の告げる衝撃的な事実に僕は愕然とする。
「僕だけ? ……そんな……もう、僕の他に誰も生き残ってはいないのか……」
家族や友人達はもちろんのこと、同じ時代に生きていた者はもう誰一人としていないのだ……不意に押し寄せるとてつもない孤独感……昔話の浦島太郎も、竜宮城から帰って来た時にはこんな気分だったのだろうか?
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