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だが、強い孤独感に苛まれるとともに、その一方、ものすごく安心したこともある……。
彼女達の存在だ。
最早、人類の生存など眼中になかったあのAI主導による泥沼の戦争ならば、人類という種自体、この地球上から消滅してしまっていてもおかしくはない……でも、そうはならなかったことを目の前の彼女達は証明している。
どのようにして生き残ったのかは知らないが、ともかくも、人類はあの凄惨を極めた戦争を乗り越え、なんとかその〝種〟を100年後の世界にも繋げたのだ。
…………いや、ちょっと待て。本当にそうなのか?
しかし、安堵してわずかの後、僕の脳裏にはある疑念が過る。
本当に、あの戦争を人類は生き延びることができたのか? たとえ戦争終結まで生き延びられたとしても、もう、あの時点で地球の自然環境は壊滅的だった……。
ただでさえ、人類の寄与など必要としないくらいにAIとロボット技術は進化を遂げ、すでにこの世界は彼らの支配するものとなっていたのだ。そんな状況で、風前の灯火と化した人類という種をAI達が救うとも思えない……。
もしかしたら今、目の前にいる彼女達の樹脂で造られた皮膚の下には、金属の骨格と、モーターやら油圧ポンプやら電線の束やらが詰まっているなんてことも……。
じつは、彼女達は人間でなく、無機質の素材でできたアンドロイドなのではないのか?
そんな怖ろしい疑いを思い抱いてしまったのである。
「あ、あの……あなた達は……人間なのですか?」
僕は、ドクター達にいろいろとメディカル・チェックを受けながら、おそるおそる彼女に尋ねてみた。
「……ああ。わたし達がロボットではないかとお疑いなのですね。はい。人間ですよ。この新しい時代の人類です。金属や樹脂ではなく、骨と肉でできた体にちゃんと血も通っています」
だが、しばし不思議そうに僕の顔を覗き込んだ後、彼女は薄らと微笑みを浮かべると、変わらぬ穏やかな声でそう答えた。
幸運なことにも、僕の抱いた嫌な予感は大きく外れてくれたようである……やっぱり、彼女達は僕と同じ、正真正銘の人間なのだ。
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