特別天然記念物「旧人類」

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 血液検査にMRI、さらには脳波に到るまで、徹底的にメディカル・チェックを受けさせられた後、いろいろと点滴を打たれてからリハビリもこなし、すっかりもとの体力を取り戻した僕は記者会見の場に引っ張りだされた。  超高層な病院ビルの最上階にある、壁一面がガラス窓になった明るい大会議室で、会見席の僕を囲む記者達の間からカシャカシャと微かなシャッター音が聞こえる。  皆、手に何も持ってはいないが、おそらくはメガネにカメラ機能が搭載されているのだろう。僕の時代にもすでにあった技術だ……って、みんなメガネかけていないんだけど、それじゃ、カメラ付きコンタクトレンズでもしているのか? そこまで技術が進歩したのだろうか?  この時代でも、やはりAIの助けなしに人類は生きていけないということか……そういえば、人間とAIは良好な関係を築けているのだろうか? 僕の時代にはAIの方が上位になってしまっていたが、どちらが上でも下でもなく、互いに平等といえるような良い関係性が……。  そんな疑問がふと頭を過る僕であったが……。 「――今のご気分はいかがですか?」 「この時代についてどう思いますか?」  その疑問を確かめるよりも前に、僕の方が質問攻めにされてしまった。 「あ、はい。ええと……なんだかまだ夢を見ているような気分です。今の時代については……とにかく戦争が終わっていてくれてよかったです」 「あの戦争について思うところを一言お願いします」  こんな経験今までなかったので、しどろもどろになりながらも僕はなんとか質問に答えるが、答える先からまた容赦なく次の質問が飛んでくる。 「え、ええと、それは……」 「すみません。本人はまだ現在の環境になれていないため、ご筆問は挙手の上、一人一つまででお願いいたします」  すると、答えに窮する哀れな僕の姿を見て、同席していたイヴが助け舟を出してくれた。  歳は僕と変わらないくらいなのに、なんとも頼もしい女の子だ。  歳といえば、彼女はこの若さにして、僕から旧時代の人類の文化についての情報を採集する専属担当研究員に抜擢されたんだそうだ。
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