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朝、ドンドンドンッという、玄関のドアを叩く音で目が覚めた。
借金取りが来たのだろう。もう、慣れている。居留守をつかう。
じっと、身動きをしないように、声を出さないように。
「おおい、誰かいないのか」
「開けろ。いるのは分かってるんだぞ、おい」
何と言われようと、動かない。しゃべらない。
ドンドンドンッとまた乱暴にドアが叩かれる。
じっとしてじっとして。
しばらく我慢していれば、こいつらはいなくなる。
私は布団にくるまって、指一本動かさないようにしてうずくまっていた。
突然、カサっと音がしたと思ったら、目の前の箱の山がごそっと動いた。
部屋の中のほとんどを占拠しているブランド物の箱の山のてっぺんから、数個の箱がゴロゴロと転がり落ちた。
え?なに?
山の中から何かが出てくる。
「ああ、ああああ、たす……けて」
振り絞ったような声が箱の山の中から聞こえた。
私は目を見張った。
いったい誰だ。今、声を出すな。
「おらおらおら、いるじゃねえか」
ドアの向こうから借金取りの怒号が聞こえる。
「開けろよ!おら」
「ああ、あああ、たすけ……て」
しゃべるなあああ。
私は、その原因を睨みつけた。
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