依存症

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 無数にあるブランド物のロゴが入った箱の間から、白い腕が出ていた。  その指には、とても、素敵な指輪が嵌まっている。  ――私は思い出した。  昨日、この指輪が欲しくなって、持って来てしまったのだった。  その、持ち主ごと。  女子会の時、指輪見せてって言って、さりげなく指輪を外そうとした。  でも、指輪が抜けなかったんだもの。  だから、女子会がお開きになった時、家で飲みなおそうよって誘ったのだ。 「開けねえのかよ。じゃあ、こっちから開けてやるよ」  借金取りがドアを蹴破った。  ゴンっと派手な音を立てて、ドアが外れた。一つの蝶番だけでかろうじでドアが斜めにぶら下がっている。  いかにもガラの悪そうな二人組がポケットに手を入れながら入ってきた。 「いるじゃねえか」  一人が私を見つけて、近寄ってくる。  ああ、見つかってしまった。  私の顔は不自然に引き攣っているだろう。 「金返してもらおうか、おう?」  そいつは左腕で私の胸倉をつかんで目を細めると、掬いあげるように私の顔を見た。  右手には短いナイフを構えている。 「ほらほら、金はどこだよ」  ナイフが私の頬をペちペちと叩く。 「何とか言えよ、ほら」  恐怖で口が動かなかった。  布団の上で座り込んだまま、私は何も言えず固まっていた。     
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