依存症

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「兄貴、誰かいますぜ」  もう一人が箱の山を覗いている。  あの指輪の女を見つけたのだ。  その指輪の腕を握り、ずるずると箱の山から引っ張り出す。 「なんだこいつ」  弟分らしきチンピラが訝かし気にその女を見る。  女はそのチンピラに必死で縋りついた。 「たすけて。たすけて。――たすけて」  へ?という顔をして、チンピラは腰を引いた。 「放っとけよ、そんな女」  私を引っ掴んでいる借金取りの兄貴分が、その女を一瞥して唾を吐いた。 「そんなことより、こいつだよ」  そう言って私に向き直った男が、私の顎に手を置いてぎりぎりと締め付けた。 「あんた、どうなってもいいんだな?しっかり払ってもらうからなあ」  私はガタガタと震える体で考えた。  上手くやっていたのに。  欲しいものは何でも手に入ったのに。  お金は借りれば、いくらでもあったのに。  借金取りなんか、上手く躱せていたのに。  幸せ――だったのに。  私をにらみつけて薄笑いをしている男の背後で、弟分のチンピラと女が揉み合っている。  ぼさぼさの髪を振り乱して必死にチンピラに助けを求めている女がいる。  そして、はっと、目が覚めた。  そうだ。こんな事、してはいけなかったんだ。  駄目だ。     
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