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男を好きな素振りを遠野の前で見せた覚えはないし、一心のことも知らないはずだ。
何の接点もない遠野が、どうして知っているんだ?
遠野にちらりと視線を向ける。
「失礼します」
口を開こうとしたとき、襖の外から声がかけられた。
「お食事をお持ちいたしました」
「あ、はい。どうぞ」
襖を開けて入ってきた女将さんは、手際よくテーブルの上に料理を並べていく。
「ご飯のおかわりはこちらにおいておきますね」
「ありがとうございます」
襖が閉められると、途端にやって来た沈黙。
普段の俺と遠野の間にある空気とはほど遠く、すんげえ重い。
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