68人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
まだ人気の少ない通りを歩きながら、一心のアパートは意外と俺んとこから近いことを知る。
春の訪れを感じる季節にはなってきたけれど、朝方はまだまだ寒く、羽織ったコートの襟元をきゅっと締める。
はぁーっとこぼれた溜め息で空気が白くなるのをじっと見つめながら、俺の心は後悔でいっぱいになっていた。
こうなることを恐れていたから、距離を置いたのに。
会うのを避けていたのに。
けど、心の奥底では、ずっとこうなることを望んでいた。
俺はなんだかんだ言って、ずっと、ずっと……おまえだけを待っていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!