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「桐谷さーん!」
足場の悪いでこぼこな山道を、何も考えずにただひたすら登っていると、後方から呼ばれた。
「何だよ?」
振り向くと、豆粒よりちっさいんじゃねーの? というくらい遠いところに、遠野の姿が見えた。
「速いっす! もっとゆっくり歩いてくださいよー!」
山籠りを繰り返してきた俺とは違い、初めて山に登るという遠野にとっては、俺の歩くスピードは速すぎたのかもしれない。
いつもは自分のペースで写真を撮りたいから、一人で登ることが多いが、今回は上司からの命令で今年入社したばかりの遠野をアシスタントとして連れていくことになった。
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