ぐらんまと僕

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ぐらんま。 英語では祖母の事を言うんだけど、僕の場合は大祖母、つまりひいおばあさんの事をそう呼んでいた。 それは歳の近い叔父さんがいて、叔父さんが彼女の事をぐらんまと呼んでいたから。 叔父さんからすると間違いなくぐらんまだしね。 僕が物心付いた頃からもう老婆で、それでも家の裏にある畑の手入れを毎日やっていて、小さな歩幅で何処へでも歩いて行く。 近所のお寺の百段近くある階段も毎朝上ってお参りを欠かさなかった。 春は筍。 朝早くに筍を取ってきて、それを薄く削いで生で食べさせてくれる。 ぐらんまは筍の刺身って言ってた。 すごくシャリシャリして美味しかった。 夏はトマトとスイカ。 枝に下がったまま完熟したトマト。 これに勝る野菜は無い。 完熟したトマトを冷たい井戸水で冷やし、その金だらいの中でプカプカ浮いてる真っ赤なトマトに塩を振って噛り付く。 僕はこれが大好きだった。 スイカも同じで金だらいの中に入れておくと、歯に沁みる程に冷えてそれを三日月型に切って食べる。 「塩を振ると甘くなって美味しいんだよ」 ぐらんまはそう言うとすごい量の塩を僕のスイカに振っていた。 多分、老眼で良く見えてなかったんだと思う。
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