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そこにはたわいもない文章が書かれていた。
『お前も母さんも元気にしているか?
父さんは相変わらず元気だ。
変わったことといえば少し太ったくらいだな。
最近は少し寒いから風邪には気をつけろ、体調が悪いと感じたらすぐ病院にいくんだぞ。』
妻と息子を心配する良い父親というのが文章から伝わってくる。
少年は嬉しそうにくすくす笑っていた。
『この工場に務めたいと言っていたが、
ここは本当にいいところだ。
日中は仕事で忙しいが夜は自由な時間が沢山ある。
気さくな仕事仲間も沢山いるし皆仲がいい。
天気がいい日は皆でバーベキューをするくらいだ。
早く一緒に働ける日を楽しみにしてる。
一緒に働くからには子供扱いはしてやらないぞ。
携帯ばかりいじらないで勉強もやりなさい。
なんだかんだ言って母さんはお前に甘いからな。
いい子でいるんだぞ。 父より』
手紙を読み終えると1粒の雫が手紙を濡らした。雨だ。
少年は手紙が濡れないように手早く手紙をしまい、持ってきた傘をさす。
「帰ろうか」
「そうだね」
ぽつぽつと降り始めた雨は瞬く間にアスファルトの色を全て塗り替えていく。
雨はなぜかあたたかい気がした。
──まるで誰かの涙のように。
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