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姫は慌てながら、ティム王子の言葉を遮るようにして言った。
「あ、あの。私、目覚めたばかりでなにがどうなっているのか全く事情を存じ上げておらず、先程から混乱しっぱなしなのですが……ええと、私は、呪いによって眠っていたのですか?」
彼は、突如、焦ったように口をはさんできた彼女をきょとんとして見つめ返した後、「貴方は、鈴の音のような透き通った声しているんですね。ああ、なんて可愛らしい」と呟き、いまにもはちきれそうな頬に朱色を差した。
(御託はいいから、さっさと私の質問に答えなさいよ!)
ティム王子は、着実に苛々を募らせていく姫の様子に全く気付くことなく、にこりと微笑んだ。
「そうか、貴方はずっと眠りについていたから知らないのですね。いかにも仰る通りでして、貴方とこの城の方々は全員、呪いによって、永い間眠りについていたのです」
彼の説明によって、徐々に、朧気になっていた記憶が浮かび上がってくる。
(そういえば、お父様とお母様から、絶対に糸車には近づかないようにと散々言い聞かされていたわ)
時を遡ること、百年と数十年ほど前。
この姫の生誕を祝した祭りが、派手に執り行われた。
この祝宴には、国に住んでいた魔法使いたちも招いたのだが、王様と王妃様の凡ミスによって一人の魔法使いだけうっかり招待しそびれてしまった。
運悪くも、唯一、招待状を送らなかった魔女は非常に嫉妬深い女だった。彼女は自分だけ招かれなかった腹いせとして呼ばれてもいない祝祭に乗り込んでいき、この姫に『十五歳の誕生日になったら、糸車の錘に刺さって死ぬ』というなんとも理不尽な呪いをかけて立ち去った。
蒼褪めて絶望に臥した王様と王妃様にむかって、まだ姫に贈り物をしていなかった魔法使いが、呪いを完全に解消することはできないけれども、和らげることならばできると申し出た。
その結果、この姫は『十五歳になった時、錘に刺さって死ぬのではなく、百年眠った後、運命の王子様のキスで目覚める』という運命を授かることとなった。
そして、姫の宿していたこの呪いは本物だった。
そうなると、目の前のこの王子は、意を決して呪われた城まで迎えに来てくれた、『運命の王子様』ということになるのだけれども――
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