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もう一度、目の前の彼の丸々と太った身体を見やってから、彼女はぶんぶんと首を横に振った。
(ないない! 私の王子様がこんなブサメンだなんて、ありえないわ!! これは、何かの間違いよ!!)
――姫は、訪れてきた運命を粛々と受け入れるような性格ではなかった。
その時、苦笑いを浮かべる彼女の頭にふと妙案が浮かびあがってきた。
(そうだ! 気に入らないなら、もう一度やり直せばいいんだわ!)
思い立ったが吉日。
彼女は、颯爽と横たえていた身を引き起こし、てきぱきとした動作でベッドから足を降ろした。「あれ。どこへ、行かれるのですか?」と狼狽えるティム王子を完全にシカトし、部屋の隅に置かれた糸車の前まで来ると、祈るようにそれをじっと見つめた。
彼女がそれに手を伸ばしたとき、ティム王子は蒼褪めて、声を荒げながら叫んだ。
「姫君! その錘に触れたら、貴方はまた……っ!」
引き留めようとする彼の忠告を寸分も聞き入れず、姫は躊躇うことなく糸車の錘にその白い手を伸ばす。
「遠路はるばる、ご苦労様。でも、生憎、私の王子は貴方ではないわ」
その手に錘が刺さって真っ赤な血がぷくりと浮かび上がった瞬間、姫は再び眠りにつき、ティム王子は荒れ狂う茨に追い立てられて城を放りだされたのだった。
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