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哀れなティム王子が城を放り出されてから、時は刻々と流れ続け、あっというまに百年が経った。
久方ぶりにあの柔らかな感触が頬に押し付けられた瞬間、姫は、すぐにまた運命の時がやってきたのだと悟った。
彼女が警戒を滲ませながらゆっくりと瞳を開くと、そこには心配そうにじいっと自分の顔をのぞき込んでいる紛うことなき美青年の姿があった。
(!? ま、眩しい! なんというイケメンなの……!)
サファイアを嵌め込んだような瞳に、きらきらと輝いて見えるハニーブロンドの髪。スッとしたシャープな輪郭に、高い鼻、引き締まった体つき。どこからどう見ても絵本の中から抜け出してきた王子様そのもので、彼女の胸ははやくもドキドキと高鳴りはじめた。
「ご気分は、いかがでしょうか?」
「あっ……。わ、悪くは、ないです」
目の前の彼から発せられるあまりのきらきらオーラに圧倒されて口ごもってしまったら、彼は優雅に名乗り出た。
「それは良かった。私は西の隣国シュヴェルンからやってきました第二王子のアレクと申します」
(なんて美しい方なのかしら、この人こそ運命の王子様に違いない! ああ、百年前にやすやすと運命を受け入れたりしなくて本当に本当に良かった……!)
彼の麗しさに吸い込まれるように見入っていたら、アレク王子は「お目覚めになっていただけて、本当に良かった。大変だったけれど、ここまでやってきた甲斐がありました」と微笑んだ。
「まぁ。そんなに大変だったのですか?」
姫は頬を薔薇色に染めながら、可愛らしく首を傾げてみせた。百年前、ティム王子が訪れてきた時とは、天と地ほどの差がある対応ぶりである。
尋ねられたアレク王子も満更ではなさそうに「そうですね」と頷いて、この城に至るまでの道のりを話し始めた。
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