風邪をこじらせる

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 喉が痛い、身体がだるい。  朝、ベッドから目覚めると、明らかに体調がおかしい。  台所まで行き、冷蔵庫を開ける。  牛乳パックを手に取り、そのまま喉に流し込む。 「まじー」  行儀が悪いと感じながらも、どうしようもなく悪態をつきたくなるほど、酷い味がした。  食欲がない。めまいがする。 「あー、どーする、今日は確か集会の日だよなぁ」  冷蔵庫の扉――トマトと人参の形を模したマグネット二つで貼られた9月のカレンダーには、今日――6日月曜日のところに赤丸がしてある。 「うーん、行くしかないか」  時計は朝の11時。ここから渋谷までは1時間ほどで着く。今日は定期集会の日。  だが、仲間に風邪を移したら大変だ。  しかし、そう思っているそばから、咳き込んでしまう。 「えーと、マスク、マスクは……おー、これこれ」  着古して右の後ろのポケットに穴の開いたジーンズをはき、降ろしたてのシャツを着る。  洗面台の鏡に映る自分の顔を見て驚く。 「おいおい、こいつは酷いな」  洗面台の鏡に写った男の顔は赤くはれ上がり、赤い斑点が無数に浮き上がっている。 「こりゃ、だめだなぁ」  身なりを整えるのをやめて、テーブルの上に置いた携帯電話を手に取る。  おぼつかない手つきで『本部』と書かれたアドレスに電話をかけた。 「品川のスズキ トモヤスだ、識別番号V0038」  オペレーターが識別番号を復唱するのが腹立たしいくらい、体調が悪い。 「あー、そうだ。ちょっと風邪をこじらせちまって」  女性オペレーターは、症状をできるだけ詳しく話すように言われたが、どうにも頭が回らない。 「今朝、起きたら、めまいがして、それから、喉、喉が痛い、牛乳を飲んでも酷い味しかしない、空腹感はあるが、食べ物を受け付けないんだ……で、今、鏡をみているんだが、これが酷くてよ。顔が赤く腫れあがって、身体を見たら赤い斑点が浮き上がって、酷いもんだ、こりゃ、どうもこのボディ、たぶんこのままだと長くない……死んでしまうかもしれない」  鏡を見ながら赤く腫れ上がった頬を障ると、爛れた皮膚から血が流れ出してきた。
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