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「かしこまりました。それでは、別のボディを用意いたします。データを確認します。性別:男性 年齢:20歳から35歳 身長165センチ以上 体重60キロから80キロ ご希望のサイズ等は、以前と変更ありませんか?」
「あー、ただ……そーだな、もう少し筋肉質の頑丈な身体がいいな。基礎代謝がしっかりあるやつ」
オペレーターが電話口でカチャカチャと端末を操作している音が聞こえる
「大変申し訳ございません。最近は状態のよいものが入手できませんので、なかなかご希望には添えないかと……」
「うーん、例の協定のことは十分承知しているんだがね。もう少し融通を聴かせて欲しいもんだぜ……」
「誠に申し訳ございません。こちらも何分、計画的に用意できる状況ではございませんし、BODYならば何でもいいというわけにも、いかなくなりましたので、『BODY提供に関する暫定的保護協定』に抵触するような認可対象外のBODYは、緊急の場合を除き……」
これ以上、長々とした説明を聴いていては、本当に身が持たないと思ったのと、本当に具合が悪くなる一方だったので、適当な相槌を打って、電話を切り上げることにした。
長い眠りから覚め、新たな道が開けたというのに、何もかも上手く行くとは、なかなかならないものだ。
そう、我々が地球圏にやってきたのは、とある事故がきっかけだった。
地球の有人探査機が火星に降りたったのは、今から10年前のことだったか。
その時1人の宇宙飛行士が氷河の近くを探索中に誤って谷底に落下し、大けがを負った。
そこはたまたま我々が"冬眠"をしていた氷河の一部が雪解けしていた場所であり、寄生する生命体がいなくては生きられない我々にとって、それは不幸中の幸いともいえる出来事であった。
ともに生きるために、我々の仲間がその"ラッキーな怪我人"に寄生し、彼の治癒力と免疫力を活性化し、一命を取り留めたのである。
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