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我々は帰省した宿主と精神的に共存することが可能であり、ともにパートナーとして生きられるように様々な議論がなされた。
もちろん、すべての地球人が好意的であろうはずもない。
だが、我々には彼らの医療や科学の進歩に少なからず貢献できることを示すことに成功し、以後、我々と地球の間で、積極的な交渉が執り行われ、寄生すべき生物のいなくなった火星から、我々――地球人の言うところのMOM(メモリー・オブ・マーズ)の移住が始まった。
原則我々が寄生するのは健康状態に問題があり、地球の医療では延命するしかない、しかも身寄りのない成人男性に限られることとなった。
それにより、寄生された人間の心は我々に支配されるが、肉体はほとんどの場合、回復をする。
一般の人間社会に入って生活をし、月に一度、精密検査とカウンセリングをうけることになっており、それを"集会"と呼んでいた。我々は、”集会”によってそれぞれが蓄積した知識を並列化し、地球人との共存に有益な情報をできるだけ早く、共有しようとしたのだが……
「今からですと、30分以内でお届けできると思います」
「あー、わかった、わかった、それで、今日の集会なんだが……」
「こちらから関係各位に連絡を入れておきます。重要確認事項は、後ほど当局より連絡が行くかと思いますので、そちらで待機願います」
「あー、御手数かけるね」
「では、後ほど係りの者がうかがいますので、それまでにもし、今お使いのボディに異変がおきましたら、今からご案内する番号におかけください」
「了解した。玄関の鍵は開けたままにしておくから、俺は横になるよ。じゃ、あとよろしく」
電話番号を控え、玄関のカギを開けたまま、寝室のベッドに横たわった。
「まったく……、風邪をこじらせるなんて……、らしくも……ない」
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