第1章空を飛べるとはどういうこと。

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 俺かっけー、俺すげー、俺って何、俺は空を飛ぶために、いつだって、挑戦している。北海道暮らしの俺は、その自然に優美にひたっていた。  だが、俺が今目の前にいる場所は、二十階建てのビルの屋上であった。  命綱確認。背中の傘も確認。  俺は大きな声で叫ぶ。 「俺ってバカでーす」  走った。縁までたどりつきジャンプする。体が浮き傘がばさっと開く、くるくると落下を始める。空を飛んでいる。これが俺である。空だ。空なのだ。  三十分後。  お回りさんに補導された。 「いいかい、君、バンジージャンプするなら許可とってよ」 「俺にそんなものは必要ねーぜ」 「いいや、必要なの街中でやられると、みんな面白半分で見るでしょ、それに失敗したら死ぬ」 「いいや、俺は死なない、空を飛ぶんです」 「飛べません」  なんと、お回りさんは真っ当なことを呟いているのである。なんというバカ加減の大きさに俺は、辟易していた。 「お回りさん、夢を追いかけたことは?」 「あるけど」 「それなんです」 「夢で解決するほど、法律は簡単じゃねー」  なんと、お回りさんは法律を武器に使ってきた。俺は苦闘しながら、お回りさんのパトカーから降ろされ、駅に向かった。駅の混雑ぶりに俺はやはり、ふうと息を吐き出す。白い息が、唇を覆うようにして、生暖かい気圧を感じさせる。冬である。雪は降っている。だから、空を飛ぶんだ。真夏だろうが真冬だろうが、関係ねー空を飛ぶんだ。あの真っ青な空、そこに加わるようにして、下には街が広がる。それがあまりにもカッコよかった。俺は、いつもそこに挑戦している。  マクドナルドで、チーズバーガーを食べながら色んなことをおもった。宮の沢駅のマクドナルドはいつも混んでいた。だが、ちょうど昼じゃなく、朝っぱらだったのであまりこんでなかった。十時ごろというやつだろう。  俺の名前は空鳶である。カットビと呼ばれている。空を飛ぶために生まれてきた名前である。戸籍まで変えて、名前を変更したのである。くたびれたワイシャツが、ぱたぱたと揺れる。扇風機が上に接続され、くるくると回転している扇風機が、ぱたぱたとワイシャツを揺らす。スーツのズボンをぼさぼさと叩き。
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