第1章空を飛べるとはどういうこと。

3/18
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
 今日、俺は仕事を探しに出かけるのであった。  俺という人間は空を飛ぶ。空を飛んで、飛んで、そして、仕事を探す。いつも首になる、仕事場で空を飛ぶようなことをしてはならないという理由はないはずである。工場の屋上からジャンプ、建設現場の廃墟からジャンプ。学校の清掃係りを任されたので、学校の屋上からジャンプ、そのたんびに首を告げられた。現実はあまりにも無頓着すぎて、俺という人間を苦しめる。俺はどうすればいい。ニートか、ニートなのか、色んなことを考えた。だが、俺は仕事を探す。求人資を眺めながら、とほほと呟く、どれも面白みにかける。何かが俺の脳内で磨耗していくのがわかる。そんなとき、五ページ目のところに目を引くものがあった。 ―空を飛びませんか、命綱なしでヘリコプターから冨丘の山に着地、そこにはトランポリンがあって、思いっきりジャンプできますよ―  なんと、夢のような話である。電話番号を見て、電話をしてみることにした。 「あのう、求人を見たんですけど」 「そうですかあなたは、空を飛びたいのですね」 「飛びたいです」  俺は断言した。俺の発言には無意味性など一切ないのである。電話の内容は明日ヘリコプター場に来てくださいというもので、住所まで教えてもらった。  家はない、俺は、ホームレスであった。俺は、チーズバーガーを食べ終わると駅内をうろつき。沢山の人々を眺めた。学生だったり、主婦だったり、おじいちゃん、おばあちゃんだったり、若い子供だったり、ビジネスマンスーツを着用するサラリーマンだったり、そこには沢山の人々がいたのである。だから、俺は、それが当たり前だとおもっていた。あまりにも代わり映えのない世界に物申すって感じであった。  俺は、駅から上がって、宮の沢駅から離れるのであった。  俺には師匠がいた。師匠の名前はカットビである。同じ名前を持つ師匠は、空を飛んで死んでしまった。悲しいとおもったことはないけど、それが当たり前だった。何もかもを変えてくれた師匠は、いつもの微笑みで俺を包み込むんじゃないかと思えた。暖かい気持ち、塗りたくったペンキを顔中につける師匠の謎の奇行は大好きだった。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!