第1章空を飛べるとはどういうこと。

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 俺は、地面をぺたぺたと歩いた。靴はぼろぼろで穴まで開いている。  地球は周り続けている。ホームレスの俺も回り続けている。  俺は、近くのデパートに入った。施錠されている屋上までむかって、鍵をペンチで壊すと、入った。鍵はぼろぼろにさびていた。  屋上に上ったあと、そこで大きな息をすった。  縄を腰に巻き、近くにあった給水塔にしばりつけ、大きく助走をつけてジャンプした。空中をはためきながら落下していく。地面すれすれで止まると、俺は微笑んだ。あまりにも当たり前すぎた。もっと楽しいことをしたい。俺はそんなことを毎日のように考えるのであった。何が楽しいとかはなかったけど、縄をほどき、思いっきり引っ張ると、給水塔につなげてあった縄がほろりと落下してきた。  俺は人々の歓声を無視して、人ゴミの中にと入っていった。俺はいつだってむなしいほど、バカだった。俺は空が大好きだ。無限大に広がる空は太陽の慎み深い自愛に満ち溢れていた。俺に必要なのは愛だ。地球に向けられる愛なのだ。  俺は歩いた。途方もなく歩いた。何が重要かなんてわからない、俺はひたすら歩いた。先も何も見えない未来が俺を待っている、俺を絶望させる未来が俺を待っている。  信号機が青になっても前へと進む。ナンセンスだ、当たり前だと呟く。  そうして、たどり着いた場所は小学校であった。そこを見て何かほほえましくなる。黒こげた体育館を眺め、俺がしでかしたバカが未だに残っているのだとおもった。小学校から出ると、商店街に入った。色んな者が見えてくる。人々の群れが、まるで口をあける猛獣のようにくっちゃべながら歩いている。沢山の人々の群れが、軍隊蟻の行進のように突き進む。
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