第1章空を飛べるとはどういうこと。

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 俺はなんて小さいのだろう、俺の大きさなんて重要じゃないけど、俺が小さいのはわかる。俺はなんて、みじめでバカで、俺はなんて小さいのだろう、何度だっておもってしまう。  だけど、俺には空がすべてであった。  俺は、お店でロケット花火を購入すると、そのままの足で、十二階立てのマンションに向かった。屋上には、厳重な扉があり、鍵はしまっていなかった。そこを上ると、階段に手すりがなくなっていた。屋上にたどり着く。また、同じようにして、縄を腰に巻く。  手でロケット花火を掴み、ジャンプする。ライターを取り出し、ロケット花火に引火する。何十本ものロケット花火が空中で四散し爆発する。俺は火の中をジャンプしながら、地面に到達した。俺は先ほどと同じようにして縄をしまうと、目の前には不思議そうな顔をした女性がいた。その女性はこちらを見ると微笑んだ。はてどこかで見たことのある顔だとおもったが、無視して、俺は立ち去った。俺の日常なんてこんなものであろう。  歩くと老人が一人ぽつぽつと辛気臭い顔をしながら歩いていた。真っ黒な喪服は、どこかの葬式を思い出させる。師匠を埋葬するとき、沢山の人が泣いた。大きなお墓を立てた。師匠もホームレスだった。師匠はみんなの寄付金でお葬式をやって、そうして、消えていった。俺の中から何か大切な者がない気がした。俺は本屋に入って一冊の本を握った。
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